2006年2月 5日 (日)

音読の効用について(2)

 通訳の世界では「自分の音読スピードより速い英語は理解できない」ことが常識になっていま す。1分間に100語で読まれる英語は,自分が100語以上のスピードで音読でき,理解できれば,理解できます。英語の処理には,どれだけ速く音読できる かという視点も忘れてはならないと思います。これに関しては,TOEICの指導で有名な鹿野春夫先生の「速音読で処理速度をあげる」や,最近では速聴(同じテキストを1. X倍〜4倍速に速くして聴かせる)でもスピードアップによる処理速度力向上が述べられています。速音読や,速聴についてはまた機会をあらためて。

  音読指導のポイントは6つあると思われます

 1)意味、構文を十分に理解させた上で英文の音読をさせる
 2)一文単位でなく、語句のかたまり=チャンクごとに音読させる
 3)母音を1拍のリズムで発音させる。 
 4)リエゾンなどは特に取り出し練習させる    
 5)大量音読を実現するために英文理解の時間を圧縮する
 6)音読のはてにまっているもの=何ができるようになるかをはっきり示す

 従来「音読」は文字をきちんと読めるかどうかだけが活動の目標でした。しかし現在英語教育界では音読効果を何倍にもする方法が注目を浴びています。それは音読をスピーキング活動のスタート活動と位置づけることです。土屋澄夫先生の「英語コミュニケーションの基礎を作る音読指導」には,筑波大付属駒場高校の久保野先生の「キーワードリプロダクション」の例がふんだんに出てきており,大変私も刺激を受けました。その中では音読活動はなんのために行うのか,その目標が明確に示されています。

○(従来の音読)   新教材の導入→テキスト内容理解→音読
○(これからの音読) 新教材の導入→テキスト内容理解→音読→スピーキング活動
  

 キーワードや,絵をみながらのレシテーションの可能性と効能

  一昨年12月、私が勤務するY高校にオーストラリアから生徒が来たときに本校生徒にやらせた活動を紹介します。1クラス40名をまず、8班に分け、各班に外国人生徒を 1名配置しました。1班には5人日本人の生徒がいますので、各生徒に「野口英世」「鶴ヶ城」「和製英語」「桃太郎」「漢字のへんについて」に関する英文を覚えさせた上で、キー ワードだけ見ながら、英文をレシテーション(再生)し、オーストラリアの生徒に教えるよう指示しました。そのあと彼らがどのくらい理解したか確かめるた め、視聴覚室で日本文化大クイズ大会で大いに盛り上がりました。

 さて、この活動で生徒にさせたレシテーションですが、従来とは定義が少々違います。ここで いうレシテーションの定義とは「テキスト上の表現をもとに自分なりの表現でテキストの内容を再構築できること」 です。最新の心理言語学の研究によると、 我々が言葉を話すときは,

(1)言おうとする内容に意識を集中させ,
(2)その内容を表現するのに必要な語彙を脳の記憶倉庫から引っ張りだし、(3)チャ ンクを中心にしてセンテンスを組み立てるプロセスをとるそうです。

 つまり、正しく音読できるようになったテキストは「一字一句同じ文で再生させるより、い くつかのキーワードや,絵をヒントとして生徒に与え,それを英文再生の「鍵」に使い,チャンクごとにテキストの内容を英文で言わせる」ほうが、より脳の働きにあったものになりま す.意味の創出こそないので「コミュニカティブな活動」とは言えません。しかしこれはアウトプットのためには必須の活動と呼べるものです。今回の場合は,後に,外国人生徒に対し,日本人生徒の説明がどれぐらいよくわかった試すクイズを行いましたので,日本人生徒が,英文をIntakeする動機作りには成功したと思います。そしてこのことは,コミュニケーションの基礎を形成する活動です。なぜならば,「自分の中にある英文ででしか生徒は自己を表現できないからです。」チャンクごとに英文を覚えさせ,いつでも自由に取り出せる状態にすることこそ,コミュニケーションの際に力を発揮できる力であると思います。

 レシテーションは内容に意識が行くぶん、音声や構文には意識が行きません。したがって、レシテーションの前には、音声と構文の自動化、内在化 という段階まで持って行く必要があります。つまり音読のさせ方が重要なポイントになります。次にこの点について述べます。


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音読の効果について(1)

—英語のIntakeの量を増やし、アウトプットにつなげるにはー

   日本のEFL環境を考えれば,意識してIntakeのチャンスを授業中増やさないといけません。日本人が、[My name is…. Nice to meet you.]という状態から前に進めないのは、体に英語が取り込まれていないからです。効果的に英語をIntakeするにはどうしたらよいか、それをアウトプットにつなげられないかを[音読]の視点から述べてみたいと思います。

[音読 — 受験に効く音読]

 音読は受験に有効に働くことがわかってきました.STEP英語情報 2004年11・12月号で、京都教育大学の鈴木寿一教授が音読に関する実験データ(下参照)をのせています.6〜7回音読した大量音読グループと、2回程度音読したグループで明らかに大量音読グループの模試の成績は高いです。

        6月客観   11月客観
大量音読グループ    60.4       63.1
形式音読グループ    56.4       55.6

*京都にある進学校の模試データ

[音読 — なぜ音読が効くのか 理論的背景] 

 なぜ大量音読グループは成績が向上したのでしょうか。推測ですが、ひとつには音読によりボトムアップの処理速度があがった可能性が考えられます。人間の脳は言語を音声で処理します。文字を見たときにぱっと音声化できるかできないかで大きく読解の処理スピードが変わると思われます。2005年のELECの夏の研修で教わったのですが,日大附属高校の吉田章人先生によれば次のようなことがわかっているそうです。

 吉田先生のハンドアウトより

 dolphinという単語を見たとき,または聴いたとき,「イルカ」という聴覚像しかなかったら,「イルカ」という概念は思い浮かばない。「ダルフィン」という聴覚像(アコースティックイメージ)が自分の中にあってはじめて,概念と結びつく。

 Palmerによれば,聴覚像と,イメージ(概念)を強く結びつけることが重要であるとのことである。そうしておいて,次に文字(記述像)と音声(聴覚像)を結びつけると,読解速度アップに寄与すると述べている。

 おおよそ次のような流れで語は認識ではされているのではないかと言われます。

ダルフィン(音声化)→長期記憶内の聴覚像のデータベースに「ダルフィン」という音があるかどうか照合→長期記憶から「イルカ」というイメージを呼び出す。

 よって,音読により,「聴覚像と文字の関係を反応がすぐ起こるように強化」しょうとしているわけです。また音読により,今まで自分にはなかった聴覚像そのものも作り出しています。例 first time  は「ファースタイム」at that timeは「アッザッタイム」など。

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