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2012年7月14日 (土)

0435- 120714 Speaking & Writingを促す教科書の使い方について

最近自分の周りでは(Facebookのおともだちをふくめ) Speaking, Writingをテーマにする人が多い。Readingや語い指導と違い、案外見過ごされてきたテーマだ。今回はSpeakingやWriting を促す装置としての教科書はどうあるべきか、どう使うべきかという点について簡単に話したい。

まず、大原則から話せば,コミュニケーションの原点は「個人」である。よって、「個から世界へ」の順番で教科書が編集されているかが最も重要になる。なぜなら、自己表現する場合、最もしやすいのは自分自身の話だからだ。そこから、順をおって、「家族、地域社会、2項対立的な価値観を問う問題、日本の文化などの紹介、世界の諸問題についての論理的な意見と発展していくのが最も自然で理にかなっていると思う。

トピックの選定については、SpeakingやWritingするのであれば、話したい、書きたい動機を作り出すことも大事なので、トピックの選定が極めて重要になる。できれば、意見が分かれやすいものを設定すればよい。例えばディベート甲子園のテーマなどは非常に参考になる。そのひとつに「野生動物が幸せか、動物園の動物が幸せか」があり、このテーマで実際に英文を書かせてみた。

さらに言えば、コミュニケーションであるならば、話す相手、書く相手を指導者側が作り出す必要がある。何も生徒を外国に連れて行く必要はない。友人を話しをする相手、自分の書いたものの読者にするしかけを作ってあげればよいのだ。前述した「野生動物が幸せか、動物園の動物が幸せか」であれば、ピアライティングの手法を使い、First Draftをとなり同士で交換させて読ませ、コメントを書かせた。人を入れ替えこれを10人ほど繰り返す。すると、書き手に分かりやすく、アピールする書き方というものを学ぶことができる。教師は机間巡視などして、いくつかの英文を見た後、生徒の表現や構成についてよいところを発表させ、クラスで共有させる。また、典型的な表現のミス,についも言及する。生徒は教師の指摘や、友人に指摘されたところ、それから友人の英文表現や構成でまねたいところを 2nd Draftに盛り込んで書き直していく。これを提出させて 教師がコメントを付け、Final Draftを書かせる。これを元にキーワードや絵をもとにプレゼンさせればspeaking活動になり、生徒にメモをとらせ、「どんなことを言っていたかレポートして」と言えばこれまたListening& speaking活動につなげられる。

書かせる英文はもちろん、使わせる文法や、書き方のスタイルといったことを教える目的もあるので、内容面とともにそれを練習させた上で書かせたい。「好きに書きなさい」では身につくものも少ない。やはり言語形式についても指導者側のねらいが重要だ。書くという作業は Speakingにおいては Accuracyを高めてくれる。実は文法学習も、最終段階でWritingに持っていくことでやはり表現のAccuracyを高めてくるのに役立つのだ。理解させ、単語を入れ替えてどんどん文を作らせる。その際、「なんなく」とか「いのちがけで」などの英文にするのが難しいが日常よく使う(和文和訳しないといけない)表現も盛り込んでおき、一緒に「表現」も教えてしまう。そしてファイナルステップで自己表現させればよい。仮定法であれば、「もし隣に座っている女の子が僕の彼女ならサイコーなのに」とか(笑)このあたりは灘の木村先生などの実践なども大いに参考にしています。また意見の述べ方にも英語は一定の型があるので、型の指導が先決であると思う。自己表現とは、相手に自分のもつ情報や考えをわかりやすく伝えるのが最優先なので、文法にせよ、意見の述べ方にせよ一定の型を学ばせることが重要になるのだ。

また教科書を使った活動の最後にレシテーション活動(プレゼンテーション活動)を持ってくることも、英文のAccuracyを高めるためには非常に役に立つし、fluencyも同時に鍛えてくる。レシテーションとはKey Words や写真、絵をもとに英文内容を復元する活動である。暗唱とは違う。生徒に一字一句間違えないで言えと指示すると、生徒の意識は形式に向かってしまう。これはこれで意味はあるが、コミュケーション活動とはいえないかもしれない。内容に意識を向かせるためには、「教科書の英文の通りでなくてかまわないよ」という一言が重要になる。一種のプレゼンテーション活動にしてしまう。プレゼンなのだから、「話す声の大きさ、スピード、むずかしすぎる語いを使わないこと、アイコンコンタクトなどにも注意せよ。」という指示が生徒にすっと入る。もっともこれらすべてをまず教師がモデルとしてデモンストレーションすることにより、生徒に明確に達成目標を示さねばならない。さらにレシテーションという発表活動を行う動機を与えたければ、生徒たち自身に評価コメント(あたたかいコメント)を書かせて、本人に渡せばよい。友人の「すげーな」という一言は教師の100回のはげましに勝ると思う。

文法や表現のインプット。こうした一連のしかけのはてに表現活動があることを忘れるべきではないだろう。「しこみ」が大事なのは教育も同じであると思う。

さて、教科書の話しに戻る。表現活動は個から世界へと順次拡大させるほうがいいと述べた。これから選ぶ場合は別として、すでに選んだ教科書がそうなっていない場合、支障のない範囲で入れ替える、また、新たなレッスンを付け加えるという作業をすべきだ。教科書はレディメイドであり、オーダーメイドではないのだということは強く意識したほうがよい。教員は教科書の配列の奴隷になるべきではない。参考にはするが、「自分たちのやりたいこと」「生徒に達成して欲しいこと」とあわないなら、変更、削除、追加はあっていいのだ。カナダで出会ったすばらしい教師達は、自分が行いたいコースの順番に従って適宜教材をコピーしながら使っている人も多かった。教師は教科書について、もう少しエゴイスティックになって良いのだ。

コミュニケーション英語と、英語表現だが、今のようにすれば、何もべつべつにやる必要はなくなる。コミュニケーション英語の教科書のテーマに連動した形でたとえば動物や環境のレッスンのあとに「野生動物が幸せか、動物園の動物が幸せか」などのテーマで書かせる活動を組み込むことが可能になる。生徒にとって英語表現のテキストは「使える英語表現集」になりうる。表現活動させる場合、英語表現のテキストの○ページを開きなさい。といって、学習させてから、表現活動をさせることも可能だ。教科書は何も1ページ目から順番に使う必要はないのだ。したがって英語表現のテキストを出されている業者さんは多少テキストが厚くなってもよいので、自己表現に使える表現を(巻末の部分でもよいので)ばんばん入れ込んで欲しい。さらに言うならば、どうせなら、コミュニケーション英語でやらせたいテーマと英語表現のテーマの配列に関連性があれば、最強だなと思う。同じ筆者が書くことはもちろん難しい。でも連携はできるのではないかと思う。そういうテキストがあってよいと思う。

8月に県内某所で 新指導要領における英語授業と、Can-doリストと普段の授業のタスクについてというテーマでお話をさせていただく予定です。楽しみ。

p.s. シーナアイエンガー教授の「選択の科学」によれば、動物園の動物のほうがはるかに短命とのこと。自分で様々なことを選択できる自由を奪われると、いらいらを示す行動を動物は取り出すとのこと。

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コメント

「教師は教科書について、もう少しエゴイスティックになって良いのだ」…まさしくその通りです。我々は何かにつけ、「固定観念」を捨て去らなければなりませんね。

投稿: K2 | 2012年7月14日 (土) 07時57分

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