0368- 111001 読解に文法を活かすには
読解に役立つ英文法という視点で書いてみたい。
読解において文法というのは統語認識のためのパターンのことであり、ここから逸脱して読んだらダメですよーと読者に知らせるものである。しかし読解において基本文法だけ知っていればよいかというとそれは違う。読解のためには基本的な英文法の学習の先にあるものが必要だ。いわゆる英語長文未満、文法以上、英文解釈と呼ばれる領域のものだ。(薬袋はFrame of Referenceと呼んでいる。)学習者が指導者がいなくとも自動的に判断していく枠組みを教える必要がある。
いくつか例をあげてみる。
文頭に来る言葉の自動認識システム
「文頭にある To V」は、まずは「するために」ととる。のちにSVがでてきたところでそれが間違いないと確認できる(もし〜ならばかもしれないが)。また、Sに相当する名詞がでてこない場合、名詞句=Sと判断できる。
「文頭にくるVing」は、カンマがあれば分詞構文、なければ分詞か、動名詞=S」という判断のフレームワークを学習者に伝えることが重要である。
「文頭にある前置詞がついた名詞」は主語にはなれない。副詞句になる。Sは別にある。
「文頭にある、接続詞で始まる節」は原則副詞節となる。あとにSVが控えていると予測しながら読む。
「文頭にある名詞」は原則Sになる。
「文頭のit」は仮主語かもしれない (= to 以下、that 以下)という推測
It
is....のあとにthatがでてくれば、It is
とthatをはずしてみて完全な文ができあがれば強調構文であるし、そうでなければ仮主語構文の可能性が強い。強いと書いたのは
thatが関係詞であり、Itが単なる代名詞にすぎないこともあるからだ。thatが指示代名詞のこともありうる。
Sが長くなるしくみを認識する
S ( 関係詞.......)V
名+名+動詞は関係詞節ありと見抜く目。
Sにつく関係詞節は前から2つめのVの直前でかっこをとじる。
S ( Vpp..........) V
VppとVの過去形が同形の場合は視野を広げる。
述語動詞がないか探す。
and等の接続詞がなければ自動的に前のものは過去分詞と判断。
S ( Ving........) V
S (前置詞句) V
S (形容詞+アルファ)V
動詞のあとがどうなっているか認識する
O+Xの判断
SVOO
原則として、動詞が「人に何かを与える動詞、つくってあげる動詞」の場合、SVOOのパターンになりやすい。動詞の意味的分類(与える・作る)であとに人、もの(ごと)が続くと類推する。逆に、人、ものごとのパターンになっていれば、(与える か 作る )と訳しておけばまず間違いない。
SVOC
OとCになるには、主語ー述語ネクサス関係あり
1) be動詞おぎなうパターン
She made { me ( was ) happy.}
She saw { Keiko ( was ) crossing the street }.
She heard { her name (was) called }.
She kept { him ( was ) waiting }.
She left { the door ( was ) unlocked}.
She couldn't make { herself (was) understood} in English.
2) 一般動詞でつながるパターン
My mother told { me to study hard}. (学習英文法ではSVOCに分類)
My mother made {me study hard}. (使役動詞のうしろの動詞にも昔to有)
3) 動詞単位で認識パターンを教えた方がよいもの
have モノ Vpp have 人 V (プロ等に当然のこととしてしてもらう)
leave, keep, get, などの文型ごとの意味の確認。
動詞+O+前置詞のパターン認識
rob 人 of モノ
provide 人 with モノ
prevent 人 fromVing
節の中に節が入り込んでいくパターンを(とくに動詞が3つある)認識する
She said 【that [what impressed her] was the way he spoke.】
Scientists used to think 【 that men are different from animals <because they can think and learn>.】
要素間が離れていることを認識する(次にこれがくるのではないかという推測)
It is because she is very interested in what she has learned at university that she often visits African countries.
基本的な認識パターンの育成
前置詞句のパターン認識(形容詞句、副詞句)
I live (どこに?) in Tokyo.(東京に)
People (どこの?) in Tokyo (東京の)
*前置詞句の前までを訳せば、自動的に形容詞句が副詞句か決まる。
うしろから訳さないことが大切。
不定詞のパターン認識
She decided (どんなことを?) to go to America. (アメリカに行くこと)
She saved much money (なんで?)to go to America.(アメリカに行くために)
The opportunity (どんな?) to go to America(...行く)
*やはり準動詞の前までを訳せば、自動的に役割が決まっていく。
and/ or / butの等位接続詞
文法的意味が同じもの、同じ形のもの、同じ時制のV同士を接続。
節の支配領域の確認
訳語の一時保留
She made me....ときたら、「作る」ではおかしいと気づき、いったん訳を保留。happyを読んだ段階で「〜にする」に訳語を変更する。
letterという言葉から「手紙」「文字」という意味を想起し、文脈に応じて意味を決定できる。
訳語はうしろから?前から?
前置詞句や不定詞のパターン認識、訳語の一時保留の件があり、原則前から訳していきます。そうしないと、認識に時間がかかりすぎる結果になります。ただし、構造が複雑すぎるものはうしろから訳はやむをえないとしたいところです。
まとめ
一通り文法を学んだ後は、あるいは学んでいる途中で、文法の上位技能である、「判断枠組み」を教えなくてはいけないと思います。
多くの生徒が長文で苦しんでいる現実を考えると、文法の判断枠組み(解釈方法)と、多くの単語が2つ以上意味を持ち、文脈で決定されていることをしっかり教えることが基礎基本につながるでしょう。
この2つが自動化された後に、ようやく、「言い換えー逆接ー原因結果」等の英語の論理構成に目を向けることができるようになります。段落主旨、本文の主旨といった本来の内容理解のレベルに進むことができるようになります。もちろん中学レベルの判断枠組みが自動化されれば、そのレベルの英文の段落要旨、本文の主旨はわかるということになります。
今後は、文法項目に照らし合わせ、中学や高校のどの段階でどの判断枠組みをマスターさせていくのか先生方と話し合えればと思います。(ちょうどベネッセ東北さんで、Can-do listの企画に携わっていますので) また皆で使える、公文式のような段階ごとの教材なんかが中高連携で作成できるといいですね。
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