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2009年5月 6日 (水)

0202- 090506 語い習得理論 part 4 脳科学から見た語い習得(2)テキパキ音読とアウトプットの効用


—音読の記憶パワーとは?

 次に②「異なる2系統以上から情報を入れる」について考えてみましょう。語彙のインプット方法は2つしかありません。「読む(見る)、聴く」です。つまり異なる2系統からの入力とは、「目」と「耳」からの入力に他なりません。そして読む、聴くを同時にできる活動は「音読」です。もっと言うと、音読は目からインプットしたものを音でアウトプットし、耳で再インプットしている活動となり、リハーサル効果が強力です。

テキパキ音読とアウトプットの活用 :茂木健一郎氏の「鶴の恩返し学習法」

  音読パワーはまたつい最近NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で紹介された、気鋭の脳科学者茂木健一郎さんの「鶴の恩返し学習法」でも活用されていました。これは、覚えたいもの(特に英単語など)を大声で音読し、その後、テキストをみないで書いてみるというものでした。人にみせられないくらいアクティブに動いて、音読してする学習法なのでこの名前がつきました。気持ちを込めて読んだり、書いたりもします。茂木氏によると、この場合、なるべく速度を上げて、テンポよく、大量に音読をこなしていくのがよいそうです。それが没我感=Studiosにつながり、夢中になっていくとのことでした。黙読学習法と音読学習法を光トボグラフィという機械でしらべたところ長期記憶を司る側頭連合野の活性化が大きく違いました。また被験者のかたも学習効果の違いに驚いていらっしゃいました。

やる気のみなもとは :テキパキした簡単作業

 実は上記の下線部のようなことは何も茂木先生だけがおっしゃっていることではありません。NHK出版「脳と気持ちの整理術」の中で著名な脳神経外科のお医者さんである築山節先生も以下のように述べられています。

  ①やる気を起こす脳の部分は「側坐角」と呼ばれる。
  ②側坐角を刺激する一番よい方法は「体を動かすこと」である。
    =作業しているうちに興奮してくる
        *窓ふきなどやっているうちに夢中になるのがまさしくこれ。
  ③脳に興味をわかせるためには「ハードルが低く、すぐできる問題から始める」
  ④短時間の集中ですむ作業を連続させること。
  ⑤テキパキとした行動や状態が脳にほどよい作業興奮状態を作り出す。
  ⑥脳に「集中せよ」という指示は直接送れない。「時間を区切ること」で人は集中する。
  ⑦「○○時までに絶対覚えるぞ」という断固たる決意をもつこと。

テンポよく英→日音読することが、効率のよい単語記憶に結びつく

  語彙学習をするときには「やる気」をいかにおこすが肝心ですが、従来の語彙習得理論では、「やる気」は当然あるはずのものという前提で組み立てられていたように思われます。しかし現実はそうではありません。脳科学的に生徒をやる気にさせる方法を見つけることはとても大事です。
  さて、二人の脳科学のプロフェッショナルが共通で言っていることはなんでしょうか。それは、「短時間で、テキパキテンポよく、体を使った作業」です。ここに一つの語彙指導のポイントがありそうです。また、上記③の「ハードルをできるだけ低くして活動を行う」という点からは、語彙を覚える作業と、読解の作業はいったん切り離して行った方がよさそうだということがわかります。語い研究の権威、Nationも語い学習の際はいったんdecontextualize (脱文脈化)すべきと述べています。つまり「短時間にテキパキ行える活動で、脱文脈化した活動」とは、

「英語→日本語」または「日本語→英語」への変換活動に限られると思われます。

つまり次のように音読します。
○「artificial 人工の、artificial 人工の artificial 人工の」。

  1度だと記憶的には弱いので2〜4回読みがいいのではないでしょうか。考えてみれば、昔の寺子屋は論語を音読していました。artを「人の技術で作った」と覚えておくとさらに忘れにくくなると思います。

  このような繰り返しと、声に出す音読パワーを使った学習は、通訳者のトレーニング方法にも見ることが出来ます。それが「クイックレスポンス練習法」です。「英語→日本語、日本語→英語」を素早く変換していくのがクイックレスポンス法で、語彙のトレーニング法として極めて効果が高い方法として、プロの間では定着しているものです。

  まとめ

○「テキパキ英→日音読」を同じ単語セットで1週間くり返すことが大事。
○1週間の終わり2日で、覚えたかどうか、英語だけみて日本語をアウトプットしてみる。
○単語を音読する作業と、語法や同位語などの確認作業はとりあえず切り離す。
○ハードルが低く、テキパキ、ポンポンやれる作業活動が「やる気」を引き出すカギ。

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