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2009年5月 6日 (水)

0201- 090506 語い習得理論 part3 脳科学からみた語い習得(1)

 次に、語彙学習理論から離れ、「脳科学」の観点から語彙を増やす方法を考えたいと思います

 —くり返しと、異なる入力ルートから情報が入ると覚えられるー

  「脳の可逆性」という言葉があります。
可逆性とは、ある圧力をあるものに加えると、ぐにゃと曲がり、その圧力がなくなったあともその形のまま残ることです。脳も同じで、ある一定以上の信号が脳に入ると、その信号がなくなったあともその情報は脳に残り続けます。脳に変化が起こったわけです。これが「記憶」と呼ばれるものです。

  ただし、人の脳は、覚えすぎをふせぐための調整弁があります。日常の起こることをすべて記憶していくと、すぐ容量オーバーしてしまいあす。そのため、重要ではないと認識したものはどんどん忘れるようにできているのです。つまり覚えすぎをふせぐための、防御ラインをもっているわけで、これが単語記憶等を阻害します。

  脳が「重要な情報」と判断するポイントは2つあります。1つめは、同じ情報がくり返し入る場合。1週間に渡り同じ情報がくり返し入ればそれは重要な情報とみなされ、海馬に送られ、長期記憶の倉庫に入ります。このくり返し作業を「リハーサル」と呼びます。リハーサルが多いほど長期記憶になります。

  

2つめは情報の強さです。当然ですが、情報強度が強ければ強いほど、つまり、インパクトがあればあるほど記憶には残ります。例えば脳に入る信号の強さを「▲」で表すことにします。「▲▲▲」なら強度不足で脳の防御ラインを突破できなくとも、「▲▲▲▲▲」なら突破できるという信号の強さだとします。この強さはある意味ビジュアル的記憶とも言えます。いきいきと映像化、イメージ化できるものは長期記憶になります

  ただおもしろいことに、あるルートからの信号強度が「▲▲▲」であっても、別のルート(別の神経シナプスから)から「▲▲」の信号がくると「合体」して「▲▲▲▲▲」になり、防御ラインを越えるのです。つまり異なる2系統以上の入力があると、記憶に残りやすいことが分かっているわけです。これは何を意味するのでしょう。ひとつは、覚える際には、五感を総動員して覚えた方が、様々なシナプスを経由して情報が入るので覚えやすくなるということです。ただ単に本を眺めるより、CDを聴きながら読んだ方がいいでしょうし、ただ聴くだけより、音読しながら覚えた方が記憶の効率は高まる可能性が高いということです。

  また、ばらばらな知識を結びつけて覚えた際も、信号の強度はあがり、やはり防御ラインは突破できそうです。▲▲+▲▲+▲▲ これはつまり、メンタルレキシコンの中に組み込むように、他の同義語、反意語、下位語、上位語、語源、語呂合わせなどと結びつけて覚えると防御ラインをやはり突破しやすくなることを示していると思われます。

まとめてみましよう。長期記憶に残りやすい条件は…

①一定期間内に一定以上のくり返し入力があること。
②異なる入力ルートから同時に情報が入ってくること

—1週間に何回も入力があると覚えるー
 ①についてもう少し考えてみましよう。
  次のうち、どちらがより効果的な語彙の覚え方でしょうか。

   A君「毎日10語覚えよう。5日間で50語覚えるぞ。」
   B君「5日間、毎日同じ50語をくり返し練習しよう。」

                                    答え B君

・ A君の方法では毎日異なる単語を覚えることになり、「同じ情報を数日間入れる」という原則に反します。
・ 脳が「長期記憶に入れよう」と思うのは、数日間同じ情報が来た場合に限られます。つまり長期記憶にするには、数日に渡って、同じ情報を 脳におくりこめばいいわけです。

 

ですから、単語は1週間毎日同じ単語のセットをくり返し勉強するといいわけですね。

—異なる情報を間にはさみつつくり返しー
  次に注意する点は、一つの単語を一度に60秒かけて覚えるより、4秒の学習を15回くり返したほうが結果はよいということです。ただし、Ellisに よると、「ある単語のリハーサルと次のリハーサルの間隔が開いていればいるほど単語の意味を想起しやすくなる」とのことですから、ある単語のリハーサルは その場ですぐくり返すのではなく、わざと他の単語の練習を間にはさんであげた方が結果は良さそうです。つまり、artificialがターゲット語だとす ると、これを一度に15回リハーサルするのではなく、他の数十語の単語のリハーサルを間に入れながら、結果として15回くり返したほうが効果はあるという ことになります。

  さらに学習すべき単語は、最初からある一定数のグループにしておいたほうが効率とやる気(数量がはっきりし、数値的目標が立てやすい)が高まると思い ます。100語1グループとして、10〜20分で3〜4周のくりかえし練習が可能ですから、7日実施すれば、1単語あたり、21回から28回のリハーサル が可能となります。そしてリハーサルの間隔は少しずつ広げていくのが効果的です。(Schmit,2000 : Spaced Rehearsal仮説)

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