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2009年5月 6日 (水)

0199- 090506 語い習得理論 part 1

◎はじめに
  英語を学ぶ上で生徒が高校3年生の最後まで苦しむのは、語い力の少なさです。語い力増強は生徒にとっての苦行であることは間違いなさそうです。では生徒の語い力をどうつけていくか考えてみたいと思います。

◎これだけは知っておきたい ー3つの語彙学習理論—

① Mental Lexicon (Aitchson, 2003)
  脳の中には単語の意味がランダムに記憶されているわけではなく、他の様々な単語と結びついてorganizedされた形で入っている。ゆえに高速に話したり、高速な英語を理解できたりするという理論。 
  例えば、redという単語を覚える際に、greenやblueと言った等位語と結びつけて覚える。また、colorという上位語と結びつけて覚える。または、同義語、反意語や連想される語と一緒に覚えると覚えやすいという理論である。
  もうひとつ具体例をあげよう。hugeという言葉を覚える際には、big, smallという同義語、反意語また、hugeからelephantといった連想語を生徒にあげさせ、結びつけたりしても効果は高い)ただし、同時に提示される同義語・反意語・連想語は既習語でないと、生徒はかえって混乱するのでやめたほうがよい。

まとめ
○ huge – big (同), small(反), elephant (連想語)(全て既習語)   
× huge – enormous (両方未習語はかえって学習者が混乱)

② 深い処理理論 (Craik and Tuluing, 1975 )
   「単語のもつ内容をイメージしたり、その単語の様々な側面に目を向けさせることで脳が深い処理をし、忘れにくくなる」という理論。例えば、vehicleという単語を

   a) 日本語の意味を考えて10回書きなさい。   
   b) vehicleが道路を進んでいるイメージを持って10回書きなさい。
   c) 発音しながら10回書きなさい。
     では、b)が一番深い処理をする。発音しながら書くと深い処理はしない。
           抽象語はなんらかのイメージを頭に描き覚えると深い処理になる。

   深い処理を促すと考えられるものは、イメージの他には…

・ 連想語(hugeからelephantやwhaleを連想)

・ 同義語・反意語(huge --big, little)
     同義語、反意語を提示する場合、既習語であることが大前提。)

・ コロケーション( huge budget:この場合budgetは既習語であること)

・ 語源(接頭語、接尾語の知識:in (ない) different (いてもいなくとも差が)=無関心)

・ 英語ヒントでの単語の推測活動 ( If something is huge, it is very big.  Is elephant small or huge? )

 が考えられる。 つまり、深い処理理論によれば、単なる(英語・日本語)のセットで覚えるよりこれらの情報のいづれかと共に覚えた方がより深い処理がなされ、長期記憶に入る可能性が高まる。深い処理とは、鮮やかなイメージおよび、強烈な気づき、既存の知識と結びつくことで、想起しやすくなるというものであろう。

③Involvement Load Hypothesis (Laufer and Hulstijn, 2001)
   単語を覚えるかどうかは ( Need / Search / Evaluation ) に影響されるとする理論。
   ・Need … 先生が覚えろといった単語より自分が知りたい単語は覚える
    ・Search... 知りたいと思ったら、辞書をひいたり先生に聞いたりして調べる
   ・Evaluation…辞書などで調べた意味が文脈にあうかどうかチェックする

 では次の内容をこの理論にあてはめてみてください。 
  A)先生に単語帳を覚えろと言われた。
  B)テキスト中の知らない単語を辞書でひいた。
   たくさん意味があったが、文脈から意味を決めた。

 A)は( No Need / No Search / No Evaluation )単語帳を渡すだけでは最悪の結果に。
 B)は( No or Moderate Need / Search / Strong Evaluation)なので定着していきます。

ベネッセのスタディーサポートの結果も「未知語をいきなり辞書でひくより、文脈にあう意味を考えて選ぶ生徒ほど成績がよい」と同じことをのべていました。

 さて実は上の①〜③の3つの理論はそれぞれが排他的な関係ではなく、重なりある部分があるようです。(以上3つの理論はELEC同友会語彙研究班/岡田順子先生より学ぶ)

 次の活動を①〜③の理論にあてはめてみましょう。 

・ 授業で、 “Some flowers don’t need water. Why? Because they are artificial.  They are made by men.” などと書いた文を見せ、生徒にartificialの意味を推測させた上で辞書で確認させた。 

  まず、日本語で単に「人工の」と教えるのではなく、英語でヒントを出し、「なんだろう?」という推測活動を入れていますので、②の、「より深い処理」 がなされています。また、artificialを flowerというイメージがわきやすい名詞とセットにしてコロケーション情報も出していることも②の深い処理につながります。 また③の Involvement Load Hypothesisの観点から見れば、SearchとEvaluationも入っている上に、artificialの他はすべて既習語なので、「なんだ ろう?あと少しで分かる、知りたい」という欲求がでてきますので、Strongまたは Moderate Needになります。もし「artificialなものを3つあげなさい」という追加指示を出せば、連想語を考えさせることになり、①のMental Lexicon構築もすることになります。「反対語はnaturalだよ」と確認すれば、①のMental Lexiconも構築され、②の深い処理もされることになります。「語源は art(技術でつくったもの)から来ているよ」と教えれば、やはり①②の強化につながります。ただしこの場合、artに「技術」の意味があることは既習事 項になっていなければなりません。

次に、Readingの授業で、comprehensive book of mapという言葉が出てきました。先生方ならどう指導なさるでしょうか。

  一番てっとりばやいのが、日本語の意味を確認する方法です。ところが「包括的な、総合的な地図」と訳したのではなんのことを言っているのかわかりません。これでは深い処理になりません。次に語源を使うことを思いつかれるかもしれません。「com=全部 prehensive=とらえる」ですが、これも ここではピンと来ません。そこで、「A comprehensive book of map covers a lot of areas, but it doesn’t show you detailed information. about each area. Which is a comprehensive book of map, a map of Japan or a map of Iwaki?」といいます。すると、comprehensive のイメージがわきます。com(全体を)(ざっくりと大ざっぱに)prehensive (とらえる)で、「細かい情報はのせず、とりあえず全体をざっくりと網羅した地図」の意味だったわけです。このように抽象語は、実物を持ち出したり、実例 を挙げると、イメージがわきやすくなり、深い処理につながりやすくなります。このようにどんどん具体例などの情報を付け足して、未知の表現の推測を手助け する行為を、「精緻化 elaboration 」と言います。

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