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2008年7月25日 (金)

0150 -080725 仕組み化と単語指導

泉正人さんのベストセラー、「仕組み仕事術」を読みました。仕組み化とは、To Do リストにすべてことこまかに仕事内容を書き出すことにより、誰がやっても同じ効果が得られるようにすること。泉さんによると私たちがやる仕事の内容は、作業系=ルーティンワークと、創造系=考える仕事に大別されると言います。仕組み化が有効なのは前者。一人でしかできない仕事を増やすより、仕組みを作って他者に任せられれば、その浮いた分の時間でよりクリエイティブなことを考える時間や、人生を豊かに過ごす時間が生み出せるということです。

仕組み化は、一見面倒に見えます。仕事ができる人は仕組みを作るより自分でやった方が速いと思いがちだといいます。しかし、一度この作業を行っておくと、人の時間を使って仕事を進められる他、やりたくない、めんどうくさい等の感情を廃して、たんたんと作業を効率すすめることが出来、結果ものすごく仕事の効率がよくなるそうです。例えば、セブンイレブンなどでは、「お客様が2人以上並んだら、今している作業を中断し、となりのレジもあける。」と決められているそうです。これならアルバイト店員であっても「どうすればいいんだろう?」という作業中止の時間を作らずすみます。判断の入る余地なくすっと次の行動に入れる。「このいろいろ判断する必要がない。感情を廃して」というのが作業系の仕事の効率を最大限にあげるコツみたいです。

そしてそれは英語教育にも応用が利くかもしれません。特に語彙学習で。生徒の独学を阻害するものを揚げてみてそれを取り除いていくこと=仕組みを作ることで、判断の留保の時間ややるのめんどいなあという部分を極力そぎ落とせると思うのです。

まずは「音」。CDで発音が確認出来、発音記号もカタカナでの読み方も書いてあれば、読み方で迷うことはありません。めんどいなあが一つ消えます。

二つめは「意味」。どの意味とどの意味を覚えればいいのか、必要最小限のものを絞り込んでいること。最大で3つか4つか。そしてなぜそういう意味になるのかの説明があること。例えば termをあげます。  期間、用語、あたりまでは「区切る」という原義からわかるとしても、in terms of... はどうでしょうか。 「〜という観点から」という意味ですが、どうしてそういう意味になるのか説明してくれている本は辞書を含めないのではないでしょうか。「〜という言葉から→言葉に出せばそれがその人の見方がわかる→〜という観点から」とあればわかるというものです。この語義と語義のつながりが見えないまま、ばらばらに覚えるのが学習者にとってはつらいし、なぜそうなるのか?と判断の留保が起きてしまう原因となっていると思います。よって多義語の場合、コアミーニングや語義と語義のつながりを示す。

三つめは「覚え方」。
1)語源で覚えた方がいいもの
2)語源が難しいか意味がないので、語呂合わせやイメージで覚えるもの
3)派生語、反対語、仲間のことばと覚えた方がいいものもある。
4)コロケーションや例文(例文は9words以内のもの: ミラー氏のマジック7理論)

単語の覚え方を学習者まかせにするのではなく、はじめからその単語にあった覚え方が書いてある方が学習者の判断の留保がなくてよいと思います。一つの覚え方に限定するのではなく、単語に応じて1)〜4)の覚え方記憶への残し方を明記したほうがいいと思います。これも一種の仕組み化。大変でも一度作ると生徒が一人でも練習できるようになります。もう少し詳しく言うと、

1と3)ですが、メンタルレキシコン理論にあってます。要するに新出単語を既存の単語知識のネットワークに組み込む作業で、強固な記憶に結びつきます。脳のなかで小さなアハ体験ができてよいと思われます。

2)ですが、apeの場合、monkeyと一緒に覚えさせ1)で述べたようなメンタルレキシコン構築をねらわせてもいいですし、「エプ(ape)ロンをつけた類人猿、人間と一緒に料理」とエプロンをつけたお猿さんを頭でイメージさせてもいいわけです。

4)のコロケーションですが、ターゲット語でないほうの語句がターゲット語を想起させるものでなくては意味がありません。eraserと覚えるとしたら、pencilと覚えれば想起されやすくなります。(まさかeraserに例文をつけるかたはいらっしゃらないと思います)それと記憶効率を無視した、語法も一緒に覚えさせましょう的な(システム英単語)単語帳も記憶効率の点からいえば好ましくありません。それは文法ドリルの中や長文指導の中で行えばいいのですから。また例文を使った暗記ですが、Nation先生は単語を覚える際の「仕組み化」として「脱文脈化し、リスト化して覚える」ことをあげています。つまり、「読解の作業と語彙を覚える作業はいったん切り離せそのほうが効率がいい」とおっしゃっています。なのに例文を使って覚えさせるというのは効率化を妨げるかもしれません。なのでまずは9語以内とできるだけ短いことが重要です。そして意味を想起しやすいことも大事ですね。例:Sorry, /smoking is confined / in that area.

四つ目はレイアウト
見開き2ページで必ず同じ語数に固定し、50語程度にしてみる。理由の一つめは覚えた覚えていないのチェックがページをめくらずとも一度にやりやすいから。学校で作るとしたら、B4の表で50、裏で50の1枚で100語を覚えるプリントを作ります。一度に単語を俯瞰できます。理由の2つめは10枚やれば1000語というふうに学習者が自分の努力を数量化して意識化しやすいですからね。レイアウトは徹頭徹尾同じにします。学習者の「レイアウト変更」によるストレスをなくし、判断の留保をふせぐテクニックの一つだと思います。レイアウトの点ではZ会の速読英単語はストレス度が極めて高く最悪の部類に属します。レイアウトがすっきりし、迷いがない状態がベストです。

五つ目は
長期記憶の方法をしっかり仕組み化しているもの。そしてそれが単語リストのレイアウトと関連しあっているもの。これはどういうことかといいますと、長期記憶にはリハーサル(くり返し)がもっとも有効です。そして語句は音を使った記憶が有効です。音読練習は、B4の裏表100語に対して行います。英語と日本語を交互に2回ずつ音読します。「confine限定する confine限定する」1語2秒としても、100語なら200秒で終わります。つまり1周するのに4分かかりません。これを毎日4〜5周すれば、7日間で最大35回その単語に触れます。くり返しの回数が多いほど長期記憶に入る可能性がでてきます。ですから、音読練習やチェックがしやすく、数の計算もしやすいほうがいいわけです。そのためのB4片面50語のレイアウトはおススメです。(単語帳なら見開き2ページで50語)

再利用可能な仕組み化

市販の単語帳のメリットはこちらでやるべき作業をすべてやってくれているという点です。しかし、あえて学校独自の単語プリントを作ることもできます。学校が両面100語の単語プリントを50枚用意できれば5000語の学習が可能になります。単語帳を買わせるのも一つの手ですが、英語1,2の教科書、Readingの教科書、過去問などから作っておきます。これはフォーマットを統一し、エクセルに入力してもらいます。確かに大変ですが、教員で手分けしていったんエクセルに入力し、データを統合し、「VLOOKUP関数」を使えば新しく単語を入力した瞬間に、その単語のもつ情報もすべて他のセルに自動で表示できるようになります。(学籍番号を入力すると、氏名からすべての成績まで一瞬に表示されるあの機能です)しかも元データの削除、訂正、追加が可能。

さらに大きな仕組み化は、学校全体地域全体で同じ単語データベースを構築することです。データベース構築に協力した学校さんは自由に単語プリントを作れるようにします。すると小、中、高と全く同じデータベースを使って、それぞれのコースにあった単語プリントが作れるようになります。学校内や学校間でコンテストを行うことも可能になります。これぞ既存の単語帳を越えるオープンソース単語プロジェクト。

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