不定冠詞 a について
have lunch VS have a lunch どちらが正しい? 英語教師なら「前者に決まっている」というでしょう。でもなぜaが付かないのかを答えられるでしょうか? 大修館の英語教育には1月号から冠詞についての連載がのっています。そこでは「a」を使う場合について次のような説明がありました。
[a]が使えるのは、 □輪郭・形がはっきりしている場合 □ たくさんある中のひとつという場合
□「たくさんある中のひとつ」
たとえば、Mary gave John a punch in a nose. はネイティブにはおかしく聞こえます。「a」はたくさんあるものの中のひとつというニュアンスがあるので、この文では「ジョンのたくさん鼻がある中のひとつにパンチした」というニュアンスになります。正しくは in [the] noseとしなくてはなりません。
□「輪郭・形がはっきりしていること」
机、リンゴ、馬、昼食、宿題の絵を生徒に書きなさいと言ってみます。おそらく、机、リンゴ、馬はどの生徒も同じような絵を描くでしょう。誰が考えても形、輪郭、イメージがはっきりしていてものは英語の世界では[a]を付けられます。
a desk, an apple, a horse, ではaがなくなるとどうなるのでしょうか? はっきりした形、輪郭がなくなってしまうのです。appleでリンゴの原形をとどめないので、「すりおろしリンゴ」、 horseなら馬の形をとどめないので「馬肉」になってしまいます。[a]があるものは皆で共有できる絶対的な形、イメージがあるものなのです。
さて生徒に「昼食」「宿題」の絵を描かせるとどうなるでしょうか? 「昼食ならおれはイメージできるよ」と言う人がいるかもしれません。でも、数人に絵を描かせるとおそらくリンゴや馬の時と違いばらばらな絵になるでしょう。昼食といっても、レストランの昼食か、お弁当箱か、イメージは人それぞれでばらばらで共通の輪郭、イメージがもちづらいですものね。このような皆が共有できる輪郭、形がはっきり思い浮かばないものは、[a]はつけられません。have a lunchとは言えないのです。同じ事はhomeworkにも言えると思います。いわゆるゼロ冠詞の名詞は、形、輪郭がみんなとイメージ共有できないものと言えるのではと思います。
追記
I had a late lunch. と特定のランチを表す場合は、aを付けられる。
また一見数えられなさそうなものに paperがある。ただし、特定の新聞、書類、論文という意味では普通名詞扱いとなり数えられる。I read three papers every morning.
glass(ガラス)は物質名詞で数えられないが、 a glass(コップ)となると数えられるし、fire (火)という物質名詞は数えられないが、a fire(一件の火事)なら数えられる。
また抽象的に思えることも数えられることがある。例えば、experience. 具体的な経験となると (I had a strange experience last summer. /many experiences) と数えられる。difficulty(困難)も、具体的になると数えることができる。 waterは数えられないが、水を一杯(みずさし一つ・ペットボトル1本)いただけますか? Could I have a water, please? などとは言える。 He drank a beer. ビールを(ジョッキまたは瓶で)一杯(一本)飲んだになる。つまり数えられないと言われているものも目の前の具体的なものを指す場合、数えるのだ。
加えて、形はないものだけど、始まりと終わりがはっきりしているものも一つとみなして数える。She made a speech at the meeting. / I have a class afternoon. / She made a clear explanation. We had a heavy rain yesterday.
私もこのブログを書き始めたころのエントリーで似たようなことを書いてますのでご参考まで。
「冠詞」に関する英語教育の連載は4月号で4回目。大阪の中学の先生が執筆しています。「認知文法」を駆使したこの連載に今後も注目していきたいと思います。
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